編集後記
 久しぶりのリサイタルを何とか終えて、ひと息ついているところです。
コロナ禍の為にしばらく開いてこなかったことで、
本番前は相当に不安な日々を過ごしていただけに、
この安堵感には格別なものがあります。
それにしても、何故人は緊張するのでしょうか。
いわゆるアガルというやつで、もちろん私もアガリますし、
もっと優れた人たちの談話を耳にしても、やっぱり彼らもアガルようです。
公開の場で普段の力を発揮することの難しさは、演奏ばかりでなく、
演劇やスポーツ等でも同じように思えますが、あらためて考えてみるに、
不思議と言えば不思議なものです。そしてこれに対処できる特効薬は、
多分ないのでしょう。
私は時に自問してみます。現実にあり得ないことですが、
仮に数千人収容の大ホールで満席の聴衆を前にして、
さあそこで演奏してこいと命じられたなら、
間違いなく凄まじい重圧に見舞われるでしょう。
しかし、舞台で一礼した後に Em コードを一発鳴らしてくるだけで良いと
言われればどうでしょうか。ウム、それなら余裕だろう。
こりゃ出来るわいと思います。
そうです。私にとっての難曲も、もっともっと優れた演奏家にとっては
入門者用の楽曲と大差ないのでしょうから、つまるところ、
普段の実力と取り組む課題との力関係の問題だと言えそうです。
というわけで、また次回に向けての準備に励もうと思う昨今ですが、
数十年に渡って弾いてきた作品が半分、全くの新規が半分くらいの
プログラム構成にしようかと、目下あれこれ思案中です。
閲覧ありがとうございました。
次回更新は来年1月末を予定しております。